ソロモン×小夜／みさお様






『どうして？』





『僕はあなたと戦いに来たわけではないのです。信じていただけませんか？……僕のことを』

彼と話してみたい、と思った。
ハジの右手で体を貫かれどくどく血が流れても平気でいる彼は人ではない。
私の妹でもあり最大の敵でもあるディーヴァのシュヴァリエ、ソロモン。
ベトナムのリセでのパーティーでダンスに誘ってくれた物腰のやわらかそうな紳士だ。
無益な戦いを終わらせる為に私に会いに来たという。

血の繋がりって一体何なんだろう？
ジョエルも、お父さんも、カイもリクも。私を家族として受け入れてくれた。
でもソロモンはそれを偽りだという。
人間に利用されて１００年以上もディーヴァと、本当の家族と戦い続けさせられているのだと。

どうして？
私は愛されていたよ？
みんなやさしくしてくれたよ？
なのに、なのにどうして……涙が溢れるんだろう？
あなたはディーヴァのシュヴァリエなのに。
何故そんなやさしい眼差しで私をみつめてくれるのだろう？

頬を伝う涙を拭ってくれた。
苦しむことなんて何ひとつないのだと温かい手を差し伸べてくれた。
もうこれ以上戦わなくてもいいのだと。

どうしてその手を取ってしまったのか。
彼の言葉をどうして信じてしまったのか。
何度も戦う決心をしたというのになんて私の心は脆いのだろう。

『小夜』

耳元で甘く囁かれるとそのまま彼にやんわりと抱き締められた。
何もかも忘れてこのまま身を委ねてしまっていいのだろうか？

ハジとの約束を忘れて。





了





2006.05.18