頭が痛い。昨夜は少し過ごしたからな。
　左の腕が重い。

　……昨夜は……！？

　や・ば・い…。
　自分の女癖の悪さを自覚している尚隆は、恐る、恐る、左を振り返った。

　真っ黒い自分の髪に、燃えるような赤い髪が混じって広がっていた。
　青い瞳は閉じられて、規則正しい寝息が聞こえる。

　そこには、初めてあったときから憎からず思っていた、かわいい陽子がいた。

　陽子はぱちりと目を覚ました。その可憐な頬を染め、尚隆を見た。

「ずっと、延王のことが好きでした」

「……」
「でも王と王、そのような感情があってはいけないものと硬く心に秘め、日夜、政務に勤めてきました。でも、昨夜、延王も、同じお心と知り…」
　陽子は恥じらいにポッと頬を染めた。

　（おぼえていない！　何にもおぼえていない〜！！　なんというもったいないことを！！　この可愛い陽子ちゃんとあーんな事やこーんな事までしたはずなのに。――いや、まあいい。これからずっと、グフフ……。とりあえず、おはようのブチュを決めて…）

　尚隆は陽子に迫った。

　陽子は少し後ろに下がり言った。
「一度限りとおっしゃいました」

　（え……！？)

「王とはそうしたもの、私もそのように心得ます」

　（ちょっと待て……！？）

「昨夜の思い出を大切に胸にしまって、私は王としての勤めを……」
　陽子は着物を羽織り、部屋を出て行こうとする。

　（待てい！　ちゅうとんじゃあ！！！）

　尚隆は慌てて追いかけた。
　陽子の肩をつかもうとする。陽子はひょいとよけた。
　尚隆はそのままドドッと突き進み、壁にぶつかった。

　……10ポイントのダメージ。

　陽子は晴れ晴れと正寝を出て行った。




「誰だ、こんな話を書いた奴は！！　許さん、手打ちにしてくれる！！」
　尚隆は刀を抜いてほえた！！





　了

……千巻さんのコメント……