六太×陽子／おおわ司

　　　『夏の陽』

　夏の盛りを過ぎても、雲上でさえ、まだ蒸す程の熱さが残る頃。
　休暇を過ごすということで、陽子が玄英宮を訪れていた。

　その日、尚隆は官吏に捕まっていたので、六太は以前から隠しておいた物を陽子に渡した。
「……あちらの物、だね」
　包装を見ながら陽子が目をしばたたかせる。
「それ着てさ、“でーと”しよう」
　その言葉に、陽子は驚いて六太を見た。

「六太くん……」
　露台で待っていると、困ったような声がかけられる。
　着替え終えた陽子はまだ、堂室の中にいた。
　外へ出るのを躊躇い、開けた窓の脇に立っている。
　白い、ミニのドレス姿で。
　足許は同じように白いサンダル。
「やっぱりよく似合う」
　満足げに笑む六太に軽く頬を染めながらも、陽子はほっとしたようだ。
「でも……恥ずかしいよ」
「ああ、大丈夫」
　六太は頷いて、指令を呼んだ。

「へえ、こんな所があるんだね」
　指令に騎乗してやってきたのは、人影のない浜辺だった。
　白い砂浜に、輝く波が穏やかに打ち寄せる。
　その風景を嬉しそうに見詰める陽子に、六太も笑みを浮かべる。
「これ、本当に貰っていいの？」
「いいよ。他に誰も着ないだろ」
　確かに、こちらの人がこんなに肌を晒す服を着るはずがない。
「それに、陽子に似合うだろうと思ったんだ」
　陽子が逡巡したのはほんの少しの間だけ。
「……ありがとう。すごく嬉しいよ」
　海からの風が、陽子の鮮やかな緋色の髪とスカートの裾を揺らす。
　六太は目を細めた。
　太陽の光はもちろん眩しいけれど。
　それは、もっとずっと近くにある光りの所為。
「とりあえず、一番に見てみたかったんだ。後で尚隆に見せてやれよ。喜ぶぜ」
　陽子はちょっと瞬きして六太を見詰めた。そして、いきなりサンダルをぽいっと脱ぎ捨てて、波打ち際へ駆けだした。
「陽子！？」
　六太が驚いている間にそのまま海へと入ってしまう。
「陽子！」
　浅い水を蹴って。
　くるり。
　振り返る。
　髪を背へやりながら、微笑した。
「見せないよ」
「はあ！？」
「六太くんが私に似合うって選んできてくれたんでしょう。どうせこの格好でうろうろできないし、秘密のデート用にとっておく」
　唖然とする遙かに年上の少年を見て、ね、と笑う。
　それで六太は我に返り、はあと大仰に息を吐いて青い空を見上げた。
　そうしないと、陽子は視線を逸らさないから。
　いつまでも、翠の瞳に魅入ってしまうから。
「……涼しそうでいいよな。俺もあちらの服を持って帰れば良かった」
　今度は声を上げて、陽子は笑った。
「じゃあ、次はあちらの格好でデートしよう」
「尚隆の目を盗んでかあ？」
　切ないけれど、嬉しい誘い。
　楽しげな陽子に六太も笑みが零れた。
「もういいや、俺も入るっ！」
　そして何かを吹っ切るように駆けだした。

　光りのそばへ。

　了

2002.09.08

……おおわ様のコメント……

ついつい書いてしまいました（泣）　しかも本命出てないぞ。

きゃあきゃあｖｖ

ぽぺさんに続いておおわさんまでが～！！！

うれしい～！！！

どうしようどうしよう！！

皇岐のイラストに挿し小説がああああああ～！！！

うおおおーーーーーーー！！　癖になる～！！（よだれジュルジュル）
んもー、書いてほしいがためにイラスト描きたくなるーー（笑）　いや、マジで。

しかも！！　六太×陽子！！

ギャー！

読めば分かるとおり、延王×陽子前提ですが（笑）
丈田フィルターでは、まぎれもなく、六太×陽子です！！

「とりあえず、一番に見てみたかったんだ。後で尚隆に見せてやれよ。喜ぶぜ」
　陽子はちょっと瞬きして六太を見詰めた。
そして、いきなりサンダルをぽいっと脱ぎ捨てて、波打ち際へ駆けだした。

このあと、陽子が怒ると思ったもん！！（笑）
「私が好きなのは延台輔ですよ」

ギャー！
ひとりで勝手に、妄想大爆発（笑）

そんな台詞はねえ！！

さらに陽子の「見せないよ」に失神。

きゃああああ～ｖｖ
これようｖ　こういうのに弱いのよう～！！

このたった一言でメロっと陽子に惚れました。

好きな男には内緒でランデブーｖ

それがいいのです！！

秘密秘密ｖ
好きな男には秘密ｖｖ

もちろん、陽子は延王が一番大好きで、六太に対する好きとは違うんだけど、
だからこそ六太に対する心遣いがうれしい！！

この秘密は、六太が延王の麒麟だから。
だから延王に秘密でも大丈夫なのです！！

二人で内緒話したりして。
こそこそと。
クスクスと。
思い出し笑いをしたりして。

「オイ。二人で何をこそこそと話してる」
「ないしょー。ね、陽子」
「はい、内緒です。ねー、六太くんｖ」
「…………」

眉間に皺を寄せて憮然とした延王を、二人で笑って。

でも、ちゃんと彼が本気で怒る前に教えてあげるのがコツ。

きっと、六太も陽子もそれを心得ている。

だから、つかの間の秘密。

楽しい秘密。

優しい秘密。

切ないけど、うれしい秘密。

光のもとに、いつも雁国主従がいられる事を心から祈りたくなりましたｖｖ

…… と勝手に解釈（汗）　すみません。ペコペコ。

んもーーｖｖ　読んでいて胸がきゅんきゅんしちゃってｖｖ

ステキな挿し小説、本当に本当にありがとうございました！！！