浩瀚×陽子/みさお様





   
『催眠』





「んにゃぁぁ〜〜」ごろごろごろごろ……。
陽子は浩瀚の膝の上で甘えて鳴いた。浩瀚は何事も無かったように政務に勤しんでいる。

「祥瓊、すごいわね。浩瀚さま」
「顔色ひとつ変えないわね」
「……台輔今頃どこに逃げ込んでいるんでしょうねぇ。もう今日で3日目よ」
「さてねぇ……と言っても頼れる処って延台輔の処しか無いでしょ?」

3日前、陽子は景麒の私室の隅っこに小さく丸まっていた。陽子を探していた祥瓊が見つけて声をかけたが陽子からは「にゃ〜〜ん」という言葉しか返ってこなかった。傍らには「はじめてみよう簡単な催眠術」という本が落ちていた。

祥瓊達の睨んだ通り景麒は延麒六太の元を訪れていた。
「延台輔、私は一体どうすればよろしいのでしょうか?」
項垂れる景麒の顔は引っ掻かれた傷跡が生々しく残っていた。
まさか、まさかあのようなことになるとは思ってもみなかったのだ。堯天で最近手に入れた書物…。催眠術を使い主上の気持ちを少しでも自分に向けたかった、そう安易な気持ちで確かめてみたのだ。思いつきで「猫になれ」…と。

「シャーーーッ!!」
まさにその瞬間陽子は猫になった。そして景麒の頬に爪あとを残した。
「素人が掛ける催眠術ほど危険な物はないのに、お前よく陽子に試せたもんだ」
「………」
景麒は言葉もなくただ激しく落ち込んでいた。
「掛けた本人、お前だな。お前が解くか何か強い刺激を与えてやるか…だな」
「わたしが術を解くなど…」
「じゃ、陽子を引っ叩くなりするしかねーだろうな」
「ととととんでもない! 主上を叩くなど言語道断!」
はあーーっ、と延麒六太は溜息を落とした。
「景麒、お前金波宮に戻った方がいいんじゃねえの?」
「は? いや、しかし…」
「お前んとこの冢宰が陽子を放っておく訳ねーだろうが?」
景麒は立ち上がった。そうだ、浩瀚が主上を放っておくはずはないのだ。ああ、私がいない間もあやつは主上によからぬ事をしているのに違いない! すぐ戻らねば!!
「延台輔、お世話になりました」
そういうと景麒はこの世で最も速いといわれる脚で玄英宮を跡にした。
「電光石火だな、まったく」
六太は髪をむしゃむしゃと掻いて苦笑した。

慶国金波宮では浩瀚が陽子と景麒の分まで政務を負担していた。あいかわらず陽子は浩瀚の膝の上に乗り両手を浩瀚の首に回して甘えた声で鳴いていた。
「なぁーー」
ねぇ、かまって、かまってと言うような口ぶりに浩瀚は微苦笑する。
「そうですね。もう、そろそろ元に戻っていただかなければなりませんね。政務に忙殺されていましたが私の方も限界です。あなたの声が聞きたい…私の名を呼ぶ声が」

浩瀚は陽子の唇の輪郭を舌でなぞり口腔内を犯した。
「おや、これくらいでは元に戻りませんか」
くつくつと浩瀚は笑った。
「より強い刺激を与えねばなりませんので臥室に参りましょう」
浩瀚は陽子を抱き上げ歩き出したその時
「ちょっと待ったぁーーーっ!」
扉を豪快に開けて景麒が入って来た。
陽子は景麒を見てフーーッ!!と髪を逆立てた。

「台輔、主上と政務を放ってどちらにいらっしゃいましたか!」
強い口調で浩瀚は景麒を睨みつけた。
浩瀚の気迫にたじたじとなった景麒は一言も言い返せないでいた。
「あなたは主上の麒麟なのに」
そこへ祥瓊と鈴が駆けつけた。
「台輔っ!! よくも陽子を放って行方を晦ましたわねっ!」
「そうよそうよっ! 陽子は台輔の堂室の片隅でずうーーっとひとり小さく丸まっていたのよ!!」
「赦せないわ」祥瓊が呟く。
「ええ、赦さないわっ!」
鈴が叫んだ。
景麒は真っ青になりながら浩瀚、祥瓊、鈴の顔を見比べている。

「祥瓊、鈴。私は主上をなんとか元に戻して見よう。後の事は任せたぞ」
「浩瀚さま、お任せ下さい」
「陽子を元に戻してあげてください」
浩瀚は陽子を連れて臥室に向かって行った。
「しゅ、主上ぉぉぉ〜〜〜っ!」
景麒の愁いを帯びた声が金波宮に響き渡った。











2003.03.08





……みさお様のコメント……


己の書く景麒はもう、何と言うか哀れで…。
景麒ファンの方、石を投げないでくださいませね。









楽しいのはこれからさ〜vv



断言します。

私の中に位置する浩瀚で


一番最強なのはみさおさんの浩瀚です!


いやもう、だって、本当に最強なんだもん!!



みさおさんの浩陽の世界を知ったら絶対に抜け出せないデスっ!!

とにかく自分の目で、身体で、全身で堪能すべし!

悶え、笑い転げるべし!!

百聞は一見にしかず!






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