延王×陽子／ぽか様
『承前』
玄英宮に帰還すると、早速延麒捜索が尚隆指揮のもと行われた。
而して、死なば諸共とばかりに道連れを探した帷湍に捕らえられ、六太は王の御前に引き出されることとなった。
「へへ…見つかっちまったか」
開き直ったようにあぐらをかき堂々と腕組みして座ったものの、表情は幾分引きつった笑みを浮かべていた。
「下手人は揃ったな」
ぱん、と合図して関係者以外を人払いする。
不愉快極まりないと、剣呑な瞳でこちらをじっと見据える主に、けれど六太以外は「だからどうした」という我関せずの様子で落ち着いたものだった。
切り出したのは、首謀者−朱衡。
「反省は、して頂けましたか？」
「なに？」
ぴくりと片眉を上げ、尚隆が朱衡を見る。
「拙の想像では、かなりの痛手を受けたとお見受けしておりますが」
「この俺が、何の痛手を被ったというのだ」
六太が喜び勇んで手を挙げた。
「はいはい！ 俺も見てたけど、あれは相当効いたんじゃねぇかと思うぜ」
帷湍が頷く。
「全く相手にされていなかったな。ざまぁみろ」
「お前らな…」
がんがんと音をたてる頭を押さえ、尚隆はじろりと一同を見渡した。
ですが、と区切って朱衡が続ける。
「その痛手を負ったのは何故かを考えて頂かなくては、慶の御仁まで巻き込んだ甲斐がありません。主上にはこれを機に己を顧みて少々どころか盛大に反省して頂かなければ、拙も主上もあちらに返す顔がありませんよ」
楽し気に笑う声が背後から響き、全員が一斉に声の方角を振り向く。
「主上の負けですな。おとなしく反省為さるがよろしかろう」
冢宰の白沢が長い髭をさすりながら近付いて来た。口を揃えて反省を促され、尚隆はうんざりとした目を向ける。
白沢は子供のように目を輝かせ瞬くと、
「ですが、主上をたばかり、あまつさえ他国にまで害を及ぼした罪は罪。主上には、彼らをいかように罰しなさるおつもりですかな？」
と悪戯っぽく笑んだ。冢宰の言にあっては、流石に朱衡たちも背筋を伸ばして構えをとる。
面白くも無さそうにそれを見遣ると、尚隆は、ふん、と鼻を鳴らした。
「貸しはとっておいて、一番使える時に有効に使わせてもらうさ」
「ほぅ、ではこの度の事はこの場では赦す、と申されるのですな。ふむ、寛容な王に感謝するがよいぞ、御主ら」
好々爺に場を何気なく纏められ、尚隆は益々不愉快な顔になっていた。帷湍が「やはり、いい加減だな」と漏らすのが耳に入ったが、いちいち咎める気にもなれず、尚隆はすっくと立ち上がる。
「赦す、とは言っておらん。ツケにしておいてやると言ったのだ。…覚えておけよ」
低く捨て台詞を吐くと、尚隆はその場を後に去ろうと動く。
「おや、退散ですかな？」
「尚隆、なっさけねーなぁ」
などと野次が聞こえて来たが完璧に無視を決め込むことにした。「景王及び景台輔には、書面にて即刻詫状を出すよう」と言いおき足早に扉に手をかけると、囲む馬共のうち色白の者が「ああ」と何かに気付いたように呟いた。
「それなら先程、拙がしたため遣いをやったところです」
そうか、と開いた扉を閉め切る直前、尚隆の耳に不穏な言葉が入って来た。
「それにしても、景女王はお綺麗におなりでしたねぇ」
すでに自らが閉めた扉の向こうを、驚いて振り向きざま目を瞠る。
奥からは合の手を打つ六太や帷湍、そして興味をひかれたらしい白沢の愉しげな声が壁一枚通してもなお漏れ聞こえていた。
了
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| 2003.03.08 |
……ぽかさんのコメント……
そして廊下では密かに加担して一部始終を悟り切った成笙に、すれ違いざま押し殺した笑いをされるのでした。
憐憫の眼差しでもいいなぁ(ひど…！)
な、なんだか朱衡にまで陽子もててしまっているぞ…(慌)
すいません陽子ラブで(私が・笑)
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