延王×陽子／ぽぺ様

　　　『ＴＩＣＫＥＴ』

「あの‥‥、延王」
　控えめに呼びかける声に延王は振り向いた。見れば桂桂が困った顔をして立っている。
「どうした、桂桂。俺に用事か」
「あの‥‥」
　いつもははきはきと話す桂桂が言葉を捜して口篭もる様子に、延王は屈みこんで桂桂と目の高さを合わせた。
「何だ、遠慮しないで言ってみろ」
「えっと‥‥。これを渡したら延王が一日遊んでくれるって、陽子が言ったんです‥‥」
　おずおずと差し出した紙切れを見れば、確かに自分が陽子に渡した「一日下僕券」。ちょっとした遊び心で真面目な女王をからかってやろうと思っていたのだが、こう使われるとは。
「や、やっぱり駄目ですよね。ごめんなさい」
　じりじりと後ずさりして今にも逃げ出しそうな桂桂の顔を見て、延王は苦笑しつつ腹を決めた。
「いや、約束だからな。今日は一日桂桂と遊ぼう」
「え、いいんですか。本当に？」
　遠慮深い口調ながら、桂桂の顔は既にぱあっと輝いている。
「ああ。どうせ今日は暇だったんだ。うんと遊んでやる。どこへ行けばいいんだ」
「んと、じゃあ、こっち！」
　桂桂が指差した園林の奥へ、大小二つの人影は競うように駆けて行った。

　夕暮れ時、疲れきって大人しくなった桂桂を背負って太師邸を訪れた延王を陽子が笑顔で出迎えた。
「お疲れ様」
　にこにこと笑う陽子を延王は恨めしげに見遣る。その視線は無視して、降ろされた桂桂に陽子は問い掛けた。
「お帰り、桂桂。楽しかった？」
「うん、とっても」
　輝く笑顔がその言葉を裏付けていた。
「ほら、延王は嘘をつく方じゃなかったろう」
「うん。本当に」
「じゃあ延王によくお礼を言って、もう今日は帰りなさい」
「ん」
　頷いて桂桂は延王を見上げた。
「今日はありがとうございました」
「なんの。楽しかったか」
「はい、とっても」
「じゃあゆっくり休めよ」
「はい」
　丁寧に頭を下げてから笑顔で手を振って桂桂は太師邸の中へ入っていった。
　桂桂の姿が見えなくなったのを確認して、陽子は傍らに立つ延王を見上げてもう一度言った。
「お疲れ様でした」
「まったく。俺はあの券を陽子にやったんだぞ」
「浩瀚には渡すなと仰ったけれど、他の人も駄目とは言いませんでしたでしょう」
　陽子はくすくすと笑って言った。
「それはそうだが」
　正寝に向けて二人はゆっくりと歩く。長く伸びた影がそっと寄り添った。
「少しは気晴らしになりましたか」
「何が気張らしだ、と言いたいところだが、確かにすっきりしたな」
　両腕を上げて伸びをしながら延王が答えた。
「でしょう。気疲れしたときは桂桂と遊ぶのが一番なんですよ」
「俺が気疲れなどしていると思うのか」
「さあ、ね」
　陽子は悪戯な笑顔を浮かべた。
「お疲れでないなら、残りの券は朱衡さんに渡しましょうか」
「こら、調子に乗るな」
　夕陽に赤く染まった陽子の額を延王は指先で小突き、二人はくすくすと仲良く笑った。

　了

2003.03.21

桂桂かわいい！（悶絶ぴくぴく）

4コマ漫画の続きをいただきました！！

延王を手のひらで転がす陽子もよいが、何よりも桂桂。桂桂桂桂桂桂！！

がーわーいーいーーーー！！！（重低音）

もはや私を知る人には、この気持ち、言葉にする必要もなし、というくらいトロけまくっています！

陽子と桂桂が両天秤にかけられていたら、桂桂を取りかねない勢いの私。

ちなみに、桂桂と玉葉ちゃんが両天秤だと………………ずっと悩み続けるかも（笑）

まさに究極の選択！
（そんなのあんただけじゃ！）

延王と陽子のイチャイチャがまたすごい～！！

なんちゅう会話を交わすんでしょう、この二人！！

最後は読んでいるほうが照れてしまうラブッぷりです。

ぽぺさんっ！　本当にありがとうございます～！！！