六太×陽子／千里様

　　　『温柔』

「……う～ん…？」

「あ、起きちゃいましたか？」

　心地よいまどろみから半ば覚醒しつつあった六太は、寝起きの第一声に最愛の彼女の声を聞いて“これは夢かも…”と思った。

「随分気持ちよさそうに寝てましたね～」

　続けて聞こえる彼女の声に六太は“いい夢だ”という思いを深めた。

「……まだ眠たいですか？」

　その声と共に彼女の顔が目前に見えて、六太は思わずぱっちりと目を開けた。

「目、覚めたみたいですね」

　どこか面白そうに言う彼女に六太は少し苦笑する。

「……陽子、ちょっと人が悪い……」

　ごめんなさい、と謝る声もくすくすという笑い声と一緒に発せられた。

「それで、今日はどうしたんです？」

「別に…。陽子に会いたくなって来たんだけど、陽子いなかったから寝てた」

　さらりと言われた言葉に陽子は少し顔を赤らめた。

「…直接私の部屋に来たんですか？」

「うん。なんか今日は陽子にだけ会いたかったから。……迷惑だった？」

「そんなことないですってば！　……聞かなくても分かってるんでしょう…？」

　六太はだんだん細くなっていく声を聞き漏らさず、満面の笑みを浮かべた。

「それで、陽子。今日の仕事は終わったのか？」

「ええ。六太くんがなかなか起きてくれないから、明日の予習までしちゃった感じです」

　最近の彼女は楽しそうだ、と六太は思った。
　登極して数年は彼女も随分と気負っていたようだが、ここ最近というもの、彼女の仕事ぶりには余裕まで感じられるようになってきた。

（それも陽子が頑張ったからなんだよな）

　彼女が正式に登極する前から彼女を知っている六太には、その変化がよく分かった。
　そしてそれがまるで自分のことのように嬉しかった。

「どうしたの？」

　己の思考に耽ってしまった六太に陽子が尋ねる。

「いや、じゃあこっちきて」

　六太が言うなり、陽子の前に先程まで六太が使っていた毛布が舞う。
　そして気付くと、陽子は暖かいものに包まれていた。

「陽子ちょっと冷えてる。でもこうしてればあったかいだろ？」

　六太が毛布ごと陽子を抱き締めている――それが、陽子が感じた温もりの正体だった。

「でもこれじゃ六太くんが冷えちゃうよ。だから――」

　言いかけた陽子が毛布を六太の肩にもかける。

「一緒にね」

「うん」

　そうして二人はそのまま他愛ない話をして、いつのまにか温かく穏やかな眠りについた。

　終

2003.03.21

５万打アンケートのお礼でいただきましたｖ

んもう！！　んもう！！　千里さんの六太×陽子は絶品なの！！

六太が本当にさ～！！！

本当にかっこいいのよ！！　男なのよ！！

千里さん独特の優しさと包容力と男らしさがちゃんと融合してるのよ！！

それがツボにはまって……！！！

んも～！＞＜

何度読んでもいい！！　読み終わったあとの包まれるような優しさというか、空気の暖かさというか。
その世界に浸れる幸せというか。

くー！　言葉になんねえよ！！

千里サー-ーーーン！！（アパッチの叫び

ステキな小説、ありがとうございます～ｖ