浩瀚×陽子／明美様

　　　『陥落１０秒前』

　女官が置いていったお茶を一口飲むと、目の前の主が嬉しそうに焼き菓子を頬張る姿が映った。
　本当に美味しそうに召し上がる方だ。
　こういう顔をされるとついつい出先で珍しい食べ物や、美味しそうな菓子を見つけると、土産にと買ってしまう。
『こんなにも食べれない！　浩瀚はわたしをブタにするつものなのか！？』と非難されても。
　くすり、とつい笑みが零れてしまう。
「主上、こちらも宜しかったらどうぞ」
　そう言って菓子皿を差し出した。
　愛しい主は、ぷう、と頬を膨らませ、自分と、菓子皿を交互に睨みつける。
「浩瀚は、わたしに甘い物を与えておけば機嫌が良くなると思っているだろう！？」
　つい先程まで、祭祀の事で言い争いをしていたのだ。
　あくまでも質素に(ただ単に、自分が重い衣装を身に着ける事や、大げさな事を嫌っているだけだと思う)、と言い張る主と、数少ない娯楽を民に提供したい(ただ単に自分が主の艶姿を見たいだけだ。滅多にない事なのだから)自分と。
　意見が食い違ってしまって。
　女官が恐々置いていったお茶を飲んで一服しよう、となった時には、主の咽喉が嗄れていた。
「まったく。いつもいつも、そうやってごまかそうとする」
「そういう訳ではございませんが」
「じゃあ、どういう訳なのさ」
「あまりにも主上が美味しそうに召し上がるから、ついつい……」
「ふうん……」
　そう半目でこちらを睨み頷くと、椅子から立ち上がり、自分の目の前に手をついた。
　え、と思う間もなく、細い身体が卓に上がり、目の前に座り込む。器用に茶器や、菓子皿を押し退けて。
「ふうん……、浩瀚って結構」
　ぺろり、と小さな舌が自分の頬を舐める。
「美味しい……」
　そう言って何度も頬を、眦を、耳朶を舐める。
「主上……」
「降参？」
　にっこりと主が微笑まれる。
　まるで、企みを成功させた子供のように。

「お菓子も美味しかったけれど、浩瀚も美味しかったよ♪」
　そう言われれば、もう何も言えないだろう。男として。
　こうしても主に弱みを見つけられてしまった。
　年甲斐もなく赤面するなど、自分が信じられなかった。
　けれど、それが悔しい、という気持ちが何故かさらさらなかった。

　了

2003.05.18

明美さんから挿し小説をいただきました！！

美味しーーーーーーーい！！！（中居くん風に

美味しかろう。いや、次に美味しくされてしまうのは女王様か！

誘い受け～誘い受け～ｖ

ていうか、お菓子を食べたあとの女王様は、さぞかし甘いに違いない！！

浩瀚！　思いっきり食っちゃってください！！

良し！　良し！！　よーーーし！！！！！＞＜

もちろん！　陽子が浩瀚を美味しくいただいちゃってもよろしくてよ！

明美さんｖ　可愛い陽子をいつもありがとうございます～ｖ