浩瀚×陽子／みさお様

　　　『接吻』

いつもならば陽子の執務室で行なわれる浩瀚との勉強会であるが外の気候も良いという事で今日は課外授業ということになった。暖かな陽射しの中、庭院から金波宮の奥へと向かって行く。
「主上」
と言って浩瀚は陽子に手を差し伸べる。陽子は気恥ずかしそうに浩瀚の手を取った。
「男の人と手をつないで歩くなんて……初めてなんだ」
頬を染めている陽子が愛らしく浩瀚は満足げに頷き陽子の手を強く握り締める。
金波宮奥の宮と庭院を何度か通り抜け雲海に面した路亭にたどり着いた。

「今日は何を教えてくれるんだ？」
「そうですねぇ、今日は接吻についてお勉強いたしましょうか」
「接吻！？」
驚き大声を上げるその様子を面白そうに窺う浩瀚は陽子に訊ねた。
「接吻とは？」
「口づけることだ」
「然様、愛情を表すために唇をつけることですね」
浩瀚は陽子を抱き寄せ指で顎を持ち上げ掠めるように口づけた。
「ただ触れ合うだけの接吻」
真っ赤になった陽子の唇を啄ばむように口づける。そして舌で唇を抉じ開け歯列をなぞるように
舌と舌を絡ませ角度を変えながら深く口づけた。唾液がぴちゃぴちゃと音を立てる。
思う存分陽子の舌を味わった浩瀚は陽子の唇から漏れた唾液を舐め取った。
「そしてこのような欲情の匂いのする接吻がございますが」
陽子はというと息も絶え絶えに浩瀚の胸の中へ倒れ込んでいた。

「私の愛情は感じていただけましたでしょうか？」
胸の中でコクコクと頷く陽子に容赦ない一言が告げられた。
「しかし主上の接吻は私への愛情が感じられません」
陽子は驚いて浩瀚を見上げた。
「ち、違う。愛しているに決まっているだろ」
「態度で示していただきませんと。主上の接吻では判断いたしかねます」
ううっ…と唸り上目がちに浩瀚を見つめる。
「ど、どうすればいいんだ？」
「これから主上にはしっかりお勉強していただきましょう」
ニヤリと浩瀚は笑った。

「では主上は私の言う通りなさってください。よろしいですか？」
陽子は浩瀚の瞳を見つめ頷いた。
「唇は結ばないで半開きになさってください。抉じ開けるのも楽しいですが私が進入しやすいようになさってください」
言葉通り陽子は唇を半開きにした。
「私の唇を舌で舐めていただきましょう。そして歯列をなぞって私の舌を絡め取ってください」
言われた言葉に体がカーっと熱くなり途惑っていると浩瀚から急かされる。
「さっ、お早く」
覚悟を決めて陽子は浩瀚の上唇の輪郭を舌でなぞり始めた。そして下唇へと移動していく。
ゆっくり艶かしく動く舌が浩瀚の歯列をなぞり舌を絡め強く吸う。唾液の音が響き渡る。
すると急に陽子の舌遣いが活発になった。浩瀚は己が言ったこと以上に努力して頑張る陽子が愛しくて堪らなくなった。
長い長い口づけを終え陽子は全身の力が抜けまたしても浩瀚の胸に倒れ込んだ。
そんな陽子の体を力強く抱きしめる。

「主上の愛情を感じ取れました。……が如何なさいました？途中で舌の動きが」
体を浩瀚に預け陽子は胸の中でひっそりと呟いた。
「さくらんぼ」
「はっ？」
「さくらんぼの茎を口の中で結んでみたんだ。小学生の頃クラスメイトから教えて貰ったんだけど『キスが上手くなる』って聞いて…。意味もわからずに練習したりで」
「主上は勉強熱心でらっしゃいますね」
「うん、浩瀚に色々教えてもらうのは楽しかったりする」
「では主上には予習復習をしていただきましょうか」
三度激しい口づけを交わし床へと倒れ込んだ。

翌日、朝議を終え執務室に戻った陽子は浩瀚から昨日の復習をするよう言われ周りに誰もいないか確認して濃厚な口づけを落とした。扉の影で景麒がわなわなと肩を震わせ拳を握りしめていることも知らずに。

了

2003.08.11

「さ、お早く」のところでいつも吹き出して笑ってしまう私です。

だって、浩瀚ったら、膝を叩いて「早く早く」と言ってそうなんですもの(笑)

最強なくせに、焼きもちやきで独占欲強くて可愛いのｖ

みさおさんの浩瀚に、私の心臓はいつもドキドキなのです～ｖ