戴国ギャグ／明美様

　　　『白圭宮の秘密』

「琅燦！これはいったいっ！？」
　李斎は冬官長の琅燦に血相を変えて詰め寄った。
　手にしているのは、次回のイベントにて販売される予定の冊子である。
　題名は、『白圭宮の夜』とある。
　表紙には、この白圭宮の主・驍宗と泰麒である二人が描かれている。
　表紙だけを見れば、思わず厳粛な気分になりそうなそんな感じだが、一枚捲るとそこに描かれているのは、壁際に追い詰められた驍宗と、そんな驍宗に迫っている泰麒だった。
「ああ、それ？　上手く描けているだろう？　我ながら上手く描けたと……」
「そういう事を聞いているのではないっ！！」
　李斎は卓子に拳を叩きつけた。
「李斎。煩い。私は徹夜でそれを描いていたんだ。もうちょっと静かにしてくれない？」
　琅燦は煩げにほつれた髪を撫で付けた。
　李斎は再び、口を開こうとした瞬間、戸口が新たに開き、泰麒が入ってきた。
「た、台輔」
「李斎。これは、僕が琅燦にお願いしたのです」
「台輔！？」
「この戴は、まだ凍えている人がいます。飢えている人がいます。そういった人たちに、まっとうに生活出来る様、僕たちは頑張らなくてはなりません」
　泰麒はそう言って、冊子を手に取った。
「これも、景気回復の策の一つです。これで、外貨を稼ぎ、食料を輸入するのです。その為の犠牲をこの白圭宮を預かるものが払うのは当然でしょう」
　背後から、正頼がそっと瞼に袖口を当てる。
「なんとも御立派に御成長されましたな……。じいは嬉しいですぞ」
　琅燦は李斎にばれない様、声に出さずに笑う。
　依頼は確かに泰麒だったが、その泰麒をけしかけ、一応は渋った琅燦を説得したのは、この外見だけは好々爺な正頼なのだ。
「僕はこの放浪生活で学びました。生きてこそ、生き延びてこそ、何かを成し遂げる事が出来るのだと。死んでしまったら、もう何も出来ないのだと。だからこそ、死んでしまった人の分まで、生きている者は、幸せにならなくてはならないのだと」
「おお……。何と立派な志でしょう。じいは、じいは、このような日が来るとは、本当に嬉しいですぞ」
　涙ぐみ、正頼は言った。
　もっとも、その涙といえば、隠し持った綿に水を含ませ、涙が出ているかのように見せかけているだけだ。
　それを知らない李斎は、正頼の泰麒の成長を喜ぶ姿に感動し、そして、自分もまた、泰麒の成長ぶりに感動した。
「台輔……」
　じわっ、と李斎は涙ぐむ。
「阿選の事は大好きだったけれど、僕を裏切ったのだから、それなりの代償は払って貰う」
　泰麒はニヤリ、と笑う。まるで、悪戯をしかけるかのように。
「阿選と驍宗さまを掛け合わせて、面白そうなのを描いてくれないかなぁ？女の子って男同士のものがすきなんだよ。中嶋さんからもそう聞いているし、あそこのウリは、冢宰とどこかの州候の掛け合せが一番人気なんだって」
「た、台輔。台輔はそれで宜しいのですか？」
「うん。だって、戴国の人たちの為だしね。別に構わないよ。ただ、驍宗さまにはばれないようにしないとね。見ちゃったら、憤死しちゃうかも。そうなったら、水の泡だからね」
　李斎は、それでも、どこか不安そうに冊子を眺めた。
「大丈夫だよ。驍宗さまは一つの事に真剣になったら、他の事は眼中にない人なんだから。他国へ僕や李斎が行って売ってこればばれないって。琅燦も勿論、行くだろう？会場で、スケブを頼まれるかもしれないから、サービスの一環として琅燦が何かを描いてくれれば、もっと売り上げが上がると思うんだ。勿論、その帰りに、古書店めぐりをしてもいいからさ」
「台輔がそう言うなら、私は行く、と答えるしかないでしょ」
　琅燦はニヤリと笑った。泰麒の思惑は見えている。
　あくまで、慶国の最大サークル、女史連合と張り合うつもりなのだ。あそこの出版物は、本当に出来が良い。今回、琅燦の描いたものだって、この女史連合の物を参考文献として、勉強したおかげなのだ。あそこになくて、こちらにあるものと言えば、売り子に麒麟が居る、という事だ。きっと、すけぶというものには、泰麒のリクエストが多いだろう。そして、それに釣られきっと飛ぶように売れるだろう。
　李斎はどこか不安げに顔を曇らせながらも、一応は納得したようだ。
　泰麒に暇を告げ、冬官府から立ち去った。
　それを確認すると泰麒は髪を掻き揚げ言った。
「僕ね、男同士の恋愛沙汰も売れるって聞いたのだけど、やっぱり、それでも、男女の熱烈な物語も好まれるって聞いたんだけど……、いくらなんでも、それはマズイかなぁ…」
「おや。それは、驍宗さまと李斎ですか？」
　正頼は、髭を扱きながら天井を見上げた。
「うん。そう。汕子に観察して貰おうかと。でね、それを書き留めて本にするんだ。実録・白圭宮の夜ってね」

　驍宗と、李斎の夜の生活が公にされるかどうか。
　それは、泰麒の一声で決まる。

　了

2004.07.02

小説掲示板ログ１の同人誌ネタの戴国版。

今度どこかのイベントへ１日だけ限定サークル『女御組合』や『女史連合』で
サークル申し込みしてみるのも楽しいかも！　
でもそうなると、上記は腐女子サークルだから
柴望×浩瀚とか虎嘯×桓たいとか延王×景麒とか書かないといけないのか？
当然、明美さんには泰麒×驍宗を書いていただいて、と。（泰麒攻めというのがポイントで）

……うーん。ギャグしか思いつかん。でも書きたいカモー。いいカモー。

なんだか４月１日ネタっぽいです（笑）

明美さん、みんな誘って作りましょう！
真剣やおい本！