六太×陽子／きよた家様
『月下美人』
秘密とは、共有する愉悦を味わうためにこそ存在するのだ、と尚隆は思う。
「お前の秘密を知っているぞ」
「･･･なんだそれ。新手のアクトクショーホーか？」
男の言葉を不審そうに受け止めて、六太はうんざりとした顔をよこす。尚隆はそれを軽く流すと存外真面目な顔をして視線を庭に送った。
「俺が知らぬと思うなよ」
意図的に抑えられた低い言葉。こちらも意図的にそれを聞き流して、六太もその視線を追う。
庭園には明るい笑い声。景王陽子とその友人たちのものだ。花の咲かぬこの季節、庭に宿る赤い炎の奇跡に六太は薄く目を細めた。
「･････」
その横顔を眺め見て、尚隆は軽く息を吐く。
なんて表情をしているんだこの馬鹿者が、と胸中で悪態を漏らしたところで当然隣の少年に聞こえるわけもない。
この麒麟は己が半身。
しかし平素見せぬ表情を浮かべるこれは、見知らぬ他人より遠い。
尚隆は甘い秘密を苦く噛み締めた。
了
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| 2004.12.25 |
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