浩瀚×陽子 （みさおさんの『接吻』の続き）
『接吻２』
「浩瀚……もうダメ」
「……ぁっふ」
仰けぞるように陽子は天に向かって息を吐いた。
長い長い口付け。そこから逃れるように、陽子は男の胸に手を置いて、身体を離したのだった。
「ん……っ」
ごくり、と。口の中に溜まった唾液を陽子は嚥下する。胸が上がり、次いであごが。そして、のどが動く。
それが、ひどく欲情を誘う仕草であることに陽子は気づいていない。
「ふ……う……」
陽子はひとつ大きな息を吐くと、今度は息も絶え絶えといった様子で浩瀚の胸元に額を押し付けた。肩で大きく息を吸って吐いてを繰り返し、呼吸を整える。
「主上、大丈夫ですか」
浩瀚が陽子の二の腕を支えた。
うう、とうめく声は胸元から。
「あごが痛い……」
舌が疲れた、呼吸が苦しい、ぜんぜん休ませてくれないと、恨みの入った涙声に、男はくすりと微笑んだ。
浩瀚は両手で少女の頬をそっと包んで、そっと持ち上げる。
「ですが、主上……」
今まで淫らに乱れた口で、今度は優雅に笑う。これだけ自分の言葉に応えてくれる愛しい者を、さらに追い詰めようとしている。
――私が悪いのではありませんよ……。そうさせる貴方が悪いのです……
声には出さず。浩瀚は身をかがめ、少女の額に口づけた。
「まだ足りません」
「だって……」
あんなにやったのに――陽子は頬を染めた。
「主上……」
貪欲なまでに陽子を求め、それに健気に応える彼女が愛しく――浩瀚は笑みを浮かべ、今度は唇に優しく触れた。
微かに触れるだけの誘い。
直接肌に触れて話す、それだけで陽子の鼓動は早まる。
「主上……」
声に、思いを乗せる。
欲しいと。
貴女がもっと欲しい――と。
声だけで、彼女を濡らす。
「まだ足りませんよ」
「どうしたら足りるの……」
陽子の手が、ぎゅ、と浩瀚の胸元をつかむ。
「……そうですね」
くすりと、浩瀚は笑った。
「とある御仁が、もっと激しく、いちゃいちゃなものを、とご所望なのです」
肌が触れたままの会話。
「……そんなの知らない」
吐息が混ざる。
「知らなくても」
「浩瀚……」
「満たされるまでお付き合いくださいませ」
「……っん」
陽子の身体を、再び影が覆った。
了
2003.08.11