アスラン×カガリ
『勝利の女神』
「なあアスラン」
無邪気な顔で俺を見上げて。
「アスランは、キラと私、どっちのほうが好きなんだ？」
カガリがいきなりそんな質問をしてきたから、俺は飲んでいたコーヒーを吹き出すはめになった。
「はあ？」
なんでいきなりそんな質問をするんだと困惑した。
「カガリに決まっているだろ」
そう言ったのだけれど。
「迷ったな！」
と怒られてしまった。どうも、すぐに答えを返さなかったのがいけなかったらしい。
「迷っていたわけじゃない」
「いや、迷った！」
俺は溜め息をつく。
「……じゃあ、カガリはキラと俺、どっちのほうが好きなんだよ」
「え……」
今度はカガリが言葉につまった。
「キラと……アスラン？」
反対に俺の方が驚いた。カガリはひどく困ったような、真剣な顔で悩みはじめてしまったのだ。
おいおいおい。
「じゃあ、崖にキラと俺がぶら下がっていたら、どっちを先に助ける？」
「……」
迷うのかよ。
俺は溜め息をついてカガリの頭に手を乗せた。
「わかった。もう聞かないから、実際にそうなったときに選んでくれ」
そんな会話を交わしたのは昨日のこと。
キラにそのことを話したら思いっきり笑われてしまった。
「崖に僕とアスランがぶら下がっていたら、カガリがどういう行動に出るのか想像つくな」
「どっちを先に助ける？」
「どっちも助けない」
「は？」
「カガリは僕たちを見てこう言うんだ『お前たち、何してるんだ！』――僕たちはこう答える『見てわからない？』」
そして、とキラは言った。
カガリは俺たちの真ん中に、同じようにぶら下がるだろう、と。
「……」
思わず、三人が崖にぶら下がっている姿を想像してしまう。
キラが肩をすくめた。
「それで、慌てたアスランと僕が崖に上って、カガリを助けるんだ」
「なるほど」
納得して笑ってしまう。
キラもくすくすと笑った。
「ラクスの場合はもっとすごいと思うな」
俺は先制して、ラクスの声真似をした。
「まあ。何をしていますの？」
「そうそう」
キラが笑う。
「そして助けを呼ぶでもなく『楽しそうですわね』って僕たちをずっと見ているんだ」
了
【カガリストに22のお題 05】
2003/12/15