アスラン×カガリ
『うたたね』
クサナギの士官用ラウンジで休んでいると、褐色の肌に金色の髪が目に入ってきた。
「……ディアッカ？」
あんなに目立つ色合いがそうそうあるわけもなく、ディアッカは俺の姿を見つけると軽く手をあげた。
「よう」
「どうしたんだ」
ディアッカがアークエンジェルではなく、クサナギにいる理由が思い当たらない。
ディアッカは人懐っこい笑みで意味ありげに目を細めた。
「各艦の食堂食べ比べ」
「……」
「なんてな。驚いたか？」
俺は溜め息をついた。信じそうになってしまったじゃないか。ここにいるとザフトにいたときとちがって緊張感が薄い。いや、もともとディアッカにはそういうところがあるからなおさら信じそうになってしまう。
「ここ、いいか？ ――っと」
座ろうとしていた場所に金髪の少女が寝ていることに気づいて、ディアッカが慌てた。
俺がカガリの腕を引くと、半無重力のためか、カガリの身体は軽く俺の腕に納まった。
「なに……アスラン。もう時間か？」
むにゃむにゃと目をこするカガリに俺は笑う。
「いいや」
まだ寝ていていいぞ、と言うと、カガリはしばらくぼーっとした後、こくり、と頷いた。そのままふわりと身体が前に傾いてくる。
カガリの頭を膝に寄せると、そのまま枕にして眠ってしまう。俺は深い眠りに誘うようにカガリの髪を撫で付けた。
「変われば変わるねえ」
顔を上げれば、ディアッカが意味ありげに笑っていた。俺は微苦笑をもらした。
「自分のことか？」
ミリアリアというナチュラルの少女がディアッカにもたらしたものは大きい。
ディアッカは肩をすくめるだけ。
「なあ、変なことを聞くけど。……怒るなよ？ そのお姫さんのどこに惹かれたわけ？」
俺は首をかしげた。
「さあ……どこだろう」
「おい」
「いや……本当に」
カガリのどこがいい、と聞かれても上手く答えられない。無茶で無謀で無邪気で無鉄砲……。
性格？ 容貌？ 言動……？？
「遺伝子……？」
思わずそう答えたら、「はあ？」とディアッカに目を丸くされてしまった。
「ナチュラルだろ、その姫さん」
カガリがキラと双子であることを知ったのは、彼女に惹かれた後だったけれど。血がつながっていると聞いて、なんとなく納得してしまったのだ。
遠く離れた世界で暮らしていて。
出会い――惹かれた。
自分が心を許した、たったふたりの人間。――そのキラとカガリは血がつながっていて。
だとしたら、それは運命というよりも、血が引き寄せたとしか思えない。
「放っておけない遺伝子……かな」
俺が呟くと、ディアッカが小さく吹きだした。
「なんだそれ、相手がってことか？」
「……かな」
くっくとディアッカは笑った。
「気づいているか？ そのお姫さん、イザークと性格がよく似ているんだけど」
「……」
俺はどんな表情をしたのだろう。俺の顔を見て、ディアッカが吹きだした。
「イザークと会わせたら、さぞ気が合うだろうよ」
俺は溜め息をついた。
「会わせてもいいけど、俺とお前の胃に穴があくだけだと思うぞ」
「……」
ディアッカは考え込むように視線を走らせ、確かに、と表情を崩した。
了
【カガリストに22のお題 20】
2003/12/15