アスラン×カガリ
『キス』
「カガリ……」
「なんだ？」
「……」
アスランは内心で溜め息をついた。
お互いの唇が３センチほどの近さとなっているのに、無邪気に見上げてくるこの瞳はなんなのだろう、と思いながら。
「なんで目を開けているんだ」
「だって、アスランの目って綺麗だし」
「……それはありがとう」
頼むから、目を閉じてくれないか……？
アスランの願いも虚しく、カガリの瞳はそらされることがない。綺麗なのはカガリの瞳だ。吸い込まれそうなほどに――。
「カガリ、キスしたいから」
「うん、してもいいぞ？」
「……あ、そ。おまえ、キスするときは目をつぶるとか、習わないのか？」
そんな講習あるわけがない。
「アスランだって目を閉じないじゃないか」
「俺はいいんだ」
カガリは不満そうに眉をひそめた。
「それってずるくないか！？」
ずるいって……。そういう問題なのか？ この場合。
「俺は、……する寸前に閉じる」
「なら私もする寸前に閉じる！」
誰か助けてー。
アスランは、冗談ではなく、本気でそう思った。
「はいはいはい」
アスランは、唇よりも先に額をカガリにぶつけた。
「うあっ！」
ゴツン、と見事な音が響き、カガリが痛そうに目をつむる。その隙をついて、カガリの唇を奪った。
「――！」
「まったくもう」
「あ――あああ！ アスラン！！」
カガリの絶叫が響き渡った。
アスランはにっこりと笑う。
「さ。映画に行こうか？」
「ずるい！」
「なにがずるいんだ」
「目をつむっちゃったじゃないか！」
「問題ないだろ？」
「ある！」
歩き出したアスランの背中をカガリが追いかける。
「そういうの、だまし撃ちって言うんじゃないのか！？」
「だまし撃ち最高」
「この、卑怯者っ！」
「卑怯者上等」
「アスランっ！！」
カガリは本気で悔しがって、アスランの背中に拳を入れてくる。アスランは笑いながら、急に立ち止まると、振り返ってカガリの両手をつかみ、再び掠るような口付けをした。
「……！」
カガリといえば、急なことに驚いて目を瞑ってしまったわけで。
「あー！」
「よし。コツがつかめてきた」
カガリには不意打ちが有効らしい。
「〜〜〜〜！！」
カガリの拳が震え、怒声が響き渡った。
「何がコツだバカーっ！！」
了
【カガリストに22のお題 16】
2004.12.28