ギャグ
『スネイプ教授と秘密』
校長室に向かう回廊の途中、外で箒に乗っている少女を見つけたのは休日の昼過ぎ。
窓の外は真中の太陽が爛々と輝いていた。
ハーマイオニー・グレンジャーは飛行術訓練でも行っているのか、親友のハリー・ポッター、ロナルド・ウィズリーとともに箒に乗って飛び回っている。
「眩しい……」
私は外にいる彼等を見つめ続けた。
日の光が爛々と輝き、彼等を包み込んでいる。
どのくらい見ていたのだろうか、「ピコンピコン」と鈍い音がした。
私は慌てて胸元を開いた。
ピコンピコンピコン――
音が高く響く。
胸元からぶら下げたタイマーが点滅して光っていた。
「――！！ ３分経ってしまう」
私は慌ててその場から身を引いた。影に入ると、ピ――と音が鳴り止んだ。
「危ない危ない……」
額の汗を拭った。
私は、３分間、日の光を浴び続けると灰になってしまうのだ。
もちろん、これは誰にも内緒だ。
私は胸元のボタンを閉じて、新鮮な空気を吸うような深呼吸をする。
「先生、こんなところでどうしたんですか？」
「！！」
心臓が高鳴った。
いつの間に来ていたのか、ドラコ・マルフォイが私を見上げていた。
「マルフォイ……。どうしてここへ」
見られた！ 見られてしまった！！
私は彼をにらんだ。銀髪をオールバックにした少年は困ったようにこめかみを掻いた。
「えっと……その……ピコンピコンって音がして……」
「――！！ 見たのか！」
カッ！！ と私は彼に凄んだ。
「え？ 見た！？ なにをですか？」
きょとんと驚いた表情のマルフォイに、私は内心でホッとする。そして、表情を緩めた。
「なんでもない。この先は校長室しかない。用がないのであれば行きたまえ」
「はい……」
私は踵を返して、階段を登る。
「ピコンピコン……」
マルフォイ少年がひとつの秘密を胸に秘めたことを、私はまだ知らない……。
了
2002.06.02