文章修行家さんに40の短文描写お題（エノミユ） ※65文字制限
00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。
【名前】 丈田弥希
【サイト】 炎帝月帝
【コメント】
描写になっているのかどうか激しく不安ですが、考えるのはすごく楽しかったです。気に入った短文があったら教えてください。
01. 告白 ／62文字
私を見た探偵は、少し驚いてから嬉しそうに笑った。
ああもう何でこんなところにいるの？
恋文を書いても、先に会ったら意味がない。
02. 嘘 ／59文字
「今度結婚するんです」
鏡に写る花嫁衣装の私を見たのか、探偵の機嫌は悪い。
文化祭の劇で、と云わなかったのはただの意地悪。
03. 卒業 ／62文字
高校へ進学したら、あと三年「女学生君」と呼べるねと探偵は云った。
校門で大きな花束を持つあの人は、
明日から何て呼んでくれるのだろう。
04. 旅 ／65文字
彼が傷心の旅に出ると云う。
もしかして昨日「探偵さんなんて嫌い」って云ったから？
なんだか可笑しくなって笑ったら拗ねられてしまった。
05. 学ぶ ／62文字
「探偵さんの子供にも、帝王学を学ばせるんですか？」
「僕の奥さんが許したらね。――だめ？」
だめもなにも、何で私に聞くのだろう。
06. 電車 ／65文字
「女学生君はこっち」
探偵は自分の隣ではなく、向かいの座席を指さした。
彼の長い足に挟まれて、正面から寝顔を見ていられる、そんな幸せ。
07. ペット ／65文字
「猫が好きなら飼ったらどうですか」
「君がいるから、いらない」
探偵は私の髪をひと房引っ張った。
私だって貴方だけで十分です。
08. 癖 ／65文字
「女学生君、……何？」
「なんでもありません」
彼の癖に気づいてから、
なんだかそれが自分だけの秘密のような気がして笑ってしまう。
09. おとな ／65文字
二十才も年上で、大学も出て、
長い人生経験をつんでいる人が私を睨む。
「もう、お土産がクッキーだったくらいで拗ねないでくださいっ！」
10. 食事 ／64文字
「食べないのか？ 女学生君！」
いつもすごく汚い食べ方をする人なのに、
時々、見惚れるくらいに綺麗な箸の使い方をするから困ってしまう。
11. 本 ／65文字
探偵になろうというくらいだから
推理小説が好きなんだろうとは思っていた。
私の横で、犯人を云いたくてウズウズしている貴方は超危険人物。
12. 夢 ／65文字
他人が見た光景を視る事の出来る人がいる。
それは、直接目が見た光景なのか、脳が見た光景なのか。
どうか昨晩の夢が彼に見えませんように。
13. 女と女 ／65文字
「お父さんね」
母が笑った。
「美由紀が生まれたとき、結婚相手を殴るのが楽しみって言ってたのよ」
それは大変だ。
心配すべきは彼よりも父。
14. 手紙 ／65文字
「女学生君！ どうした？」
飢えて死にそう、そんな手紙が来たら慌てもしよう。
「満たされましたか」
私が睨むと探偵は笑った。
「今ちょうど」
15. 信仰 ／65文字
「ああ美由紀ちゃん！ 助けて！」
益田さんが半泣きで駆け寄ってきた。
神をなだめることの出来る私が、
もしかして一番崇められているのかも。
16. 遊び ／65文字
ただ手を繋いで街を歩く。
遊ぼう、と連れ出されたのは三十分も前のこと。
そうか、何をしなくても一緒にいるだけで嬉しい遊びってあるんだ。
17. 初体験 ／65文字
目を見張る。
初めての口付けはあまりにも突然で、
「もう一度いい？」
探偵が可愛く小首を傾げたとき、思わず頷いてしまったのは一生の不覚。
18. 仕事 ／65文字
寝ていた探偵が目を覚ます。
「あ！ 女学生君！」
「探偵さんはいつ仕事をしているんです？」
「今してたじゃないか！」
夢の中でも大活躍。
19. 化粧 ／61文字
「女学生君は化粧をしないね」
急に顔を近づけるから
「探偵さんだってしないじゃないですか」
恥ずかしくて顔を伏せたら、探偵が笑った。
20. 怒り ／65文字
神の怒りを解くのは事件を解くより難しい。
「探偵さん、肩を揉みましょうか、それともお茶？」
「両方」
それで怒りが解ける美由紀マジック。
21. 神秘 ／64文字
女性には優しく、礼儀正しい。
はちゃめちゃだが、男女共に追いかけられる存在だった。
その彼が、今はたった一人の少女を追いかけている。
22. 噂 ／64文字
探偵に隠し子がいるという。
いてもおかしくない事に気づいて胸が痛んだ。
女の子で、溺愛しているという。名は美由紀、と益田さんが笑った。
23. 彼と彼女 ／65文字
頭の上についた花弁を取る。
いつもの探偵とは思えないほど優しい笑みとその手つきに、
彼がどんなに彼女を大切にしているのかを思い知った。
24. 悲しみ ／65文字
悲しみが辛いのは耐えるからだ。
耐えたくなければ憎め、それが嫌なら思う存分泣けばいい。
いつでもここで、と探偵の優しい言葉が降り注ぐ。
25. 生 ／65文字
「女学生君は死んだらだめだよ」
そんな無茶なと思ったけれど。
「じゃあ、探偵さんが生きている間は死にません」
「ならいい」
探偵が笑った。
26. 死 ／65文字
もしも私が誰かに殺されたとしても、
必ずその目の先に探偵がいてくれるから、私は笑おうと思った。
貴方が最後に見る私が笑顔であるように。
27. 芝居 ／65文字
突然呼び出された料亭には、探偵団と見知らぬ人。
「彼女が女学生探偵、白鳥麗子です」
探偵の言葉に思わず頭を下げた。
「し、白鳥麗子です」
28. 体 ／64文字
また背が伸びた。
探偵さんを追い越したらどうしよう――
そんなことを思っていたから、
急に抱き寄せられたとき、その身長差にホッとした。
29. 感謝 ／64文字
「猫が好きなんですか？」
そうだと云ったら、彼女はよく猫を見るようになった。
「にゃんこ！」
僕が笑うと、嬉しそうに笑う君が一番好き。
30. イベント ／64文字
古書屋に行くと、遅い！ と叫んだのは店主じゃなくて探偵。
そしてなぜか謝る私がいる。
いつからここは待ち合わせ場所になったのだろう。
31. やわらかさ ／64文字
雪に滑った私を支えてくれたのは探偵。
そのまま抱き寄せられて、頭が真っ白になったのは私。
彼は楽しげに笑って、私の頭上に顔を埋めた。
32. 痛み ／64文字
これは胸の病。
一緒にいると楽しくて幸せなのに、
一人でいると胸が痛くて苦しい。
処方箋に書かれた薬は、多く取れば取るほど良いらしい。
33. 好き ／63文字
「女学生君は僕が好き、大好き、好き、大好き……」
薔薇十字探偵社に飾ってある花は、
意味不明な花占いによってすべて花弁を失った。
34. 今昔（いまむかし）
／65文字
刑事がくれた写真には二十年前の探偵が写っていた。
「昔の僕に恋をしても不毛だぞ！」
本当に不毛なのは、昔の自分に嫉妬をしている彼の方。
35. 渇き ／64文字
一ヵ月ぶりに会った探偵は、不機嫌そうに私を一瞥すると、
腰に手を当て、神を殺す気か、と云った。
「もう少しで枯れるところだったぞ！」
36. 浪漫 ／61文字
「ねえ、夏にアルバイトしない？」
益田さんから紹介されたのは、某探偵事務所。
これが制服ね、と渡されたのはどう見てもメイド服。
37. 季節 ／64文字
初めて編んだセーターは、いつの間にか季節外れで。
「いつになったらくれるの、それ」
探偵がせかすように机を叩いた。
「早く出しなさい」
38. 別れ ／65文字
彼女から、さようならと云われた事がない。
いつもお休みなさいであったり、また今度。
次に会う喜びよりも別れが辛くなったら一緒に暮らそう。
39. 欲 ／65文字
女性は十六歳で結婚できるんですよ、知っていましたか？
「私、もう十八歳です」
「知っているよ」
探偵は破顔すると両手を広げて私を招いた。
40. 贈り物 ／65文字
僕は神だから君が欲しいモノなどお見通しだ！ と叫んだ探偵に
「違う」と云ったらどんな顔をするのかな。
本当に欲しいモノは、いま目の前に。
了
【文章修行家さんに40の短文描写お題】
2006.01.29-2006.02.05
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